ミニマム創内視鏡下手術の概要

ミニマム創内視鏡下手術の概要についてご紹介します。
以下に示す図は典型的な例であり、実際の創の大きさなどは、患者さんの状況によって異なります。



● 本手術は、 CO2ガスを使わず、対象臓器を取り出すミニマム創のみで完了する手術すなわちガスレス・シングルポートアクセス手術です。 腎癌の根治的腎摘除は、その特徴をよく表していますが、腎は下図のように取出されます。






● 本手術の低侵襲手術における位置付けを下図に示します。ご存知のように、内視鏡とCO2ガスといくつかのトロカーポート(器具を挿入する小さな孔)を3つの主要素として、開放手術から腹腔鏡手術への移行がなされました。その後、腹腔鏡手術の改良として、ロボット手術、LESS(トロカーポートを一箇所に集めて行なう手術), NOTES(口などの自然な孔から行う手術)などが登場し、さらに、両者を統合した手術も紹介されています。

一方、ミニマム創内視鏡下手術は、これらの手術とは異なる範疇の手術であり、CO2ガスを使わず、いわゆるトロカーポートを使わずに、臓器をとりだすシングルポートだけで完了する手術(ガスレス・シングルポートアクセス手術)です。トロカーポートを通る高価な使い捨て器具がないため、低コストとなります。






● 本手術は、従来の低侵襲手術の3主要素から、CO2ガスと高いコストを除いた手術とも言えます。






● 別の表現をすると、Ecosurgery、Ecomomy, そして、可能な限りのsafe とhigh qualityを満たす手術と捉えられます。最近の革新の流れの中にある低侵襲手術はいずれも、3要素すなわち「内視鏡」、「CO2ガス」、「高いコスト(トロカーポートを通る高価な使い捨て器具や高価な機器)」を基本として持っており、本学会の目的は、「3要素の中から、低侵襲を保ちながら2要素を除き、前者では達成できない利点を持つ低侵襲手術を確立すること」と言い換えられるかと思われます。同等の低侵襲という条件のもとで、この2要素を除くことは、 患者さん (ガスによる加圧およびCO2自体によるリスクの解消) 社会 (トロカーポートを通る高価な使い捨て器具による高いコストの軽減・解消、高い機器の購入や維持による高いコストの解消) 地球環境 (健康を守る病院からのCO2排出削減) にとって一層有益と考えられます。残る内視鏡という要素は、立体視や革新的ナビゲーションを装備したシステムへとさらに発展し、将来にわたって低侵襲手術に不可欠な要素であり続けるものと思われます。 CO2ガスやトロカーポートを使わず、臓器を取り出す創を最大限に利用するミニマム創内視鏡下手術では、術者にとって、ミニマム創が立体視・俯瞰視を可能にし、創長の調節による難易度のフレキシブルさをもたらし、「手術の易習得性」および「高い安全性」を誘導します。創からの「鈎による術野の確保」という、腹腔鏡手術による事故や外傷など様々な状況において必須な手技も習得・継承することができます。また、2つの基本手術(根治的腎摘除、前立腺全摘除)から全ての開放手術の低侵襲化へと進む「包括的な低侵襲手術教育体系」も備えています。






● 具体的な手順は、初めに対象臓器を取出すミニマム創をつくり、ここから解剖学的剥離面を展開して広いworking spaceを腹膜外に作ります。
内視鏡は創から挿入して拡大視と全員での観察を行い、術者は創からの直視も併用します。 CO2ガスを使わず、トロカーポートを使わず、低コストで、腹膜を温存して行ないます。 また、患者の状況により、創の長さを調整して、可能な限りの安全を担保します。






● ミニマム創すなわちシングルポートを最大限に利用する手術です。内視鏡を初めとした全ての器具は、下図のようにミニマム創から挿入されます。 基本的に、安価なキャッチャー(A) とウーンドリトラクター(B) のみが使い捨てであり、低コストになります。






● 実際の手術の様子ですが、上図で示したミニマム創すなわちシングルポートをつくり、そこから器具を挿入し、基本的に手指は挿入せず、手術操作を行ないます。このような手術であるため、予防的抗菌薬は不要あるいは極く少量で十分です。






● 本手術は、通常、2つのミニマム創のいずれかを用いて行ないます。骨盤より上にある副腎、腎、上部尿管は、側腹部のミニマム創から、膀胱、前立腺、下部尿管などの骨盤内臓器は、下腹部正中のミニマム創から手術を行ないます。それぞれの基本となる手術は、根治的腎摘除と前立腺全摘除です。患者さんの状況により、創の位置が変わることもあります。






● 2つの基本手術を供覧します。根治的腎摘除は下図のように行なわれ、手術痕は典型例では右下の図のようになります。






● 臓器を体内で縮小しても良い場合、すなわち巨大水腎症などの良性疾患では、腎を体内で縮小して、下図のような3−4cmのミニマム創から取出すこともあります。






● もうひとつの基本手術である前立腺癌の前立腺全摘除は、下図のような下腹部正中のミニマム創から行なわれます。






● 典型例では、前立腺は下図のように摘出されます。






● 本手術は、後腹膜アプローチですので、開腹手術の既往例でも施行可能です。本例の手術痕は下図右の矢印の様になりました。






● これまで述べた2つの基本手術が行なえると、ほぼ全ての泌尿器科臓器のミニマム創内視鏡下手術を行なうことができ、さらに改変法を用いると、困難例を含めたほぼ全ての開放手術を低侵襲化することができます。本手術はこのような効果的な教育体系を持った手術です。






● 根治的腎摘除の応用として、典型例な副腎摘除は下図のように行なわれます。






● 根治的腎摘除の応用として、腎部分切除は、典型例では、下図のように行なわれます。5cm前後の創から腎を部分切除し、切除した組織を手術中に半切し、十分な切除縁を確認します。






● 根治的腎摘除の応用として、典型例では、腎尿管全摘除は下図のように行なわれます。上部の5cm前後の創と下部の4cm前後の創を用いて行ない、腎尿管は膀胱の一部をつけて、下図のように摘出されます。






● 前立腺全摘除の応用として膀胱全摘除は、下図のように行われます。






● 改変法を用いると、困難例を含めたほぼ全ての開放手術を低侵襲化することができます。改変法は具体的には、2創、medium創、経腹アプローチ、創のsliding.およびこれらの併用などです。






● この大きな後腹膜肉腫の例では、medium創と経腹アプローチの併用で腫瘍が摘出されました。






● この隣接臓器に浸潤した腎癌の例では、 medium創と経腹アプローチの併用で、腎は脾臓や膵臓の一部とともに摘出されました。






● ミニマム創内視鏡下手術は、CO2ガスを使わないことで患者と地球環境に貢献でき、また低コストであるために医療経済に貢献できる低侵襲手術です。高い安全性と高いqualityを持ち、効果的な教育体系を備えた手術でもあります。世界の患者さんが、貧富の差なく、安全に低侵襲手術を受けられる環境づくりに貢献できる手術と考えています。